脂漏性角化症
「脂漏性角化症」と聞くと、どんなものかピンと来なくても、お年寄りの顔によくあるイボ、と聞くとイメージがわくのではないでしょうか。ただし、若くてもイボの多い方、年配の方でも一つもない方、など色々な方がいらっしゃいます。では、どうしてこのように差があるのでしょうか。ここではこの「脂漏性角化症」について解説します。
しみの種類:脂漏性角化症
目次
脂漏性角化症とは
「脂漏性角化症」は別名を「老人性疣贅(ゆうぜい)」ともいいます。疣贅は「いぼ」のことで、言ってみれば、肌の老化現象の一つです。分類としては、がん化する心配のない、両性の腫瘍ということになります。
紫外線の当たる部分、顔などに特にできやすいですが、それ以外の全身どこにでもできることがあります。表面は少し粗い感じで、最初は直径1mmくらいの非常に小さなものですが、年単位で少しずつ大きくなり、数も多くなっていくことが多いようです。色は、肌の色と変わらないもの、やや茶褐色のもの、黒に近いものなどいろいろな種類があります。
脂漏性角化症の周囲に、しみ、特に老人性色素斑と呼ばれる種類の、紫外線によるしみができていることなどもよくあります。
脂漏性角化症の診断と似ている病気
これが脂漏性角化症である、という確実な判断は素人には難しいものです。おそらく脂漏性角化症などの悪いものではないだろう、と放置していたら、実は皮膚がんだった、ということもありますので、特に高齢の方は、気を付ける必要があります。
脂漏性角化症と間違えやすい疾患としては「悪性黒色腫(メラノーマ)」や「日光角化症」と呼ばれる皮膚のがんの前段階に当たる病気があります。あるいは新しくできた、ほくろやしみなども状況によっては紛らわしいことがあります。
皮膚科の専門医であれば、特に検査をしなくても見当が付きますが、わずかでも悪性の可能性があれば、ダーモスコピーと呼ばれる特殊な機械を用いて調べてから、判断することもあります。これは、基本的に皮膚の深い層を拡大して特殊な装置で見るだけですから、痛みがある検査ではありませんし、麻酔も必要ありません。ただ、ここでも再度「紛らわしい」と判断されたごく一部の症例に関しては、病変部を切除して組織診断を行うこともあります。
脂漏性角化症の治療
脂漏性角化症の治療には色々な方法がありますが、一般的な方法のひとつに、液体窒素によって脂漏性角化症のイボの部分を凍らせ、かさぶたを作る治療方法があります。時間がたって、かさぶたが取れるとイボも一緒にとれるというものです。炭酸ガスレーザーや電気メスによる切除もあります。また、イボのサイズが大きかったり、少しでも悪性の可能性が否定できない場合などは、麻酔をかけて行う本格的な手術を行うこともあります。
まとめ
脂漏性角化症は、顔にできる場合が多いので、あまり大きなイボになってしまうと、その人の印象を左右することもあります。「年のせいだから」とあきらめてしまう方も多いかと思いますが、治療によって見違えるほどきれいになる可能性もあります。
処置は小さなうちであれば、軽く済むことが多く、ほとんどの場合、日帰り手術が可能です。処置をすることになるのであれば、大きくなる前の、早めのスタートを考えたいですね。
また、少しでも皮膚がんなどの不安がある場合は、皮膚科を受診することで診断がつきますから、悪性の疑いは排除しておきましょう。治療内容によっては健康保険も適応になります。
この記事の監修医師
- 院長
- オラクル美容皮膚科 院長 古市 雅子
- 経歴
- 2004年3月 東海大学 医学部 卒業
2006年3月 東海大学医学部附属病院 臨床研修 終了
2006年4月 東海大学医学部附属病院 麻酔科医勤務(標榜医取得)
その後、美容皮膚科にて院長などを歴任
2017年4月 オラクル美容皮膚科 東京新宿院 院長を務める - 所属学会
- 日本抗加齢医学会
日本美容皮膚科学会
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